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根管治療後のかぶせ物について part2 ~経過良好になるために~

院長ブログ
いつも、ももこ歯科のブログを読んでいただきまして、大変感謝しております。
今回のブログは、歯内療法後のかぶせ物は、フィット感が良好だと、根管治療や生活歯髄療法後の経過が良好だ、というお話です。

歯内療法の目的とは

歯内療法の目的は、根尖性歯周炎の予防と治療です。根管治療や生活歯髄療法を行った歯は、虫歯で大きく削る必要ことが多いです。

かぶせ物の役割は、歯の形態回復はもちろん、根管治療や生活歯髄療法の効果を維持していくことです。要するに、歯の中に細菌を入れさせないような、フィット感のいいかぶせ物がおすすめです。

フィット感が良いかぶせ物とは、たとえば、茶筒のようにピタッと入る、あるいは、セルフサービスでコーヒーを入れるとき、コーヒーカップと蓋のサイズが合ってると、コーヒーがこぼれず持ち運びに便利だし、飲みやすい、といったイメージです。

フィット感が良いかぶせ物の歯をレントゲンでみると、歯とかぶせ物が連続的な線で描かれるような印象です。

図1

図1左の口腔内写真で、白い円で囲まれている歯のレントゲンは図1右です。図1右の矢印で指しているところが、歯とかぶせ物が連続的に、移行的な線で描かれているのがよくわかると思います。

では、対照的に、フィット感が悪いかぶせ物をみていきます。

図2

図2左側の写真の矢印で示すところに、食べ物がつまるという主訴で、ももこ歯科を受診された患者さんの口腔内写真です。金属のかぶせ物と歯肉の間にある大きな隙間のために、フィット感が悪くなっていることが一目瞭然です。かぶせ物をした後に虫歯になって隙間ができ、食べ物がつまるようになってしまったようです。

図2右側のレントゲン写真の矢印のところは、図1右側のレントゲン写真の矢印のところと対照的で、フィット感は悪いです。歯とかぶせ物が移行的な線で描かれていません。ブカブカの帽子をかぶっているような状態です。

フィット感が悪いかぶせ物を根管治療後の歯にかぶせてしまうと、フィット感が良いかぶせ物よりも経過は良くないようです。

かぶせ物の質の違いで、経過がどう変わるか

論より証拠で、過去の報告2つをみていきます。いずれの報告も、根管治療後、かぶせ物のある歯の、根管治療の質とかぶせ物の質(フィット感が良いか悪いか)の違いで、経過がどう変わるか(新たに病気になっているか、健康のままか、あるいは病気が治っているかいないか)を評価しています。

1. Ray & Tropeら
表1
根管治療後かぶせ物のある歯1010歯を評価した結果を表1に示します。

根管治療の質もかぶせ物の質も良いと根管治療後の経過は良いようです。また、かぶせ物の質が悪いと、良いものに比べて根管治療後の経過は良くないようです。

2. Tronstadら
表2

根管治療後かぶせ物のある1001歯を評価した結果を表2に示します。

この報告も、根管治療の質もかぶせ物の質も良い方が、根管治療後の経過が良好であることを示しています。Ray & Tropeの報告よりも、かぶせ物の質は根管治療後の経過に与える影響は少ないようです。

2つの報告で共通して言えることは、根管治療の質が高く、フィット感が良いかぶせ物のある歯は、根管治療後の経過は良いようです。

フィット感が良いかぶせ物は、唾液の侵入を防いでくれます。細菌は、唾液によって運ばれます。根尖性歯周炎の原因は細菌です。

病気を直接治すのは根管治療ですが、病気を治すのを間接的に助けてくれるのは、フィット感の良いかぶせ物です。では、材質は、具体的にどんなかぶせ物がいいかは、主治医と相談して決めた方が良いです。材質的な選択肢は、咬合関係も合わせて考える必要があるからです。

1. Ray, H. A., and M. Trope. “Periapical status of endodontically treated teeth in relation to the technical quality of the root filling and the coronal restoration.”International endodontic journal 28.1 (1995): 12-18.

2. Tronstad, L., et al. “Influence of coronal restorations on the periapical health ofendodontically treated teeth.” Dental Traumatology 16.5 (2000): 218-221.

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